大阪市立中学校の校長先生が、全校集会で
- 女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むこと
- 仕事でキャリアを積む以上に価値がある。
- 子育てをした後に大学で学べばよい
と発言したことが話題になり議論になっています。
今回はこの件についてまとめてみたいと思います。
全校集会での講和要旨
この中学校のサイトから全校集会での講和の要旨を参照することができ、ニュース記事からは伝わってこない雰囲気が分かります。例えば、ニュース記事を読んだ人の感想では、
男が子育てしたって良いはず。なぜいつも女が子育てすることが前提なの?
といったものが見られますが、少なくともこの校長先生は、
子育ては、必ず夫婦で助け合いながらするものです。女性だけの仕事ではありません。
中学校のサイトより引用
と述べているようです。その同一のサイトに載っている卒業式 式辞の原稿でも、
しかし、わが日本にとって不安が一つあります。それは少子化と高齢化です。先に原子爆弾で日本人を根絶やしにすることを言いましたが、別の形で根絶やしにする方法があるのです。
それは、こどもを生み、育てることを厭う考え方を日本人の心の奥底に植えつけることです。昭和二十年代中頃に始ったベビーブームの終わりが、少子化の始まりです。そこから、どんどん生まれるこどもの数が減り続け、第二次ベビーブームつまり今の四十才前後が少し増えただけで、その後は減る一方です。(中略)
中学生の親の世代は、こどもの数の倍以上という訳です。介護問題や将来の年金のうんぬんされているのは当然のことです。
解決の方法は、これ以上、こどもの数を減らさないことです。また十八歳から六十五歳までの生産年齢人口も減る一方なので、女の子の大半は、夫や家族の協力のもと、子育をしながらキャリアも積まなくてはなりません。きびしい子育てをしながらです。保育所もまだ足りません。中学校のサイトより引用
と述べています。筆者が受けた印象としては、少なくともニュース記事による切り貼りから受けるものよりはマイルドに感じました。
問題発言なのか?
ニュース記事で行われてしまう切り貼りによる印象の変化を除外したとしても、問題発言なのかそうでないのかは非常に難しいところだと筆者は感じました。校長先生の主張は、
- 少子化は日本が抱える大きな問題
- それを解消するためには子供を産むことが必要
- 出産、子育ては楽しくて価値のあるもの
- 男女が協力して子育てをしなくてはならない
- それがしやすい環境が整備されるべき
ということだと思うのですが、これがたまに刺激的な表現で主張されているので、物議を醸し出しているのだと思います。例えば、
「女性にとってもっとも大切なことは二人以上産むこと」
- 本当に「もっとも」なのか?
- 人の価値観はそれぞれなはず
「仕事でキャリアを積むこと以上に価値がある」
- 本当に「以上に価値がある」のか?
- 人の価値観はそれぞれなはず
「子育てのあと、大学で学び医師や弁護士、学校の先生、看護師などの専門職に就けば良い」
- 子育てをやり遂げた後に簡単に就けるとは思えない
- 現状の状況から大きな乖離してる
といったあたりでしょうか。
国家という単位での繁栄という意味ではもちろん少子化は問題です。一方でグローバリゼーションが進み、個人化が進んだ今日において、
- お国の為に子を産み育てましょう
という主張は、いつぞやの大臣の発言の「女性が(国にとっての)子を産む装置」的な捉え方をされてしまうのでしょう。
産みたければ産むし、産みたくなければ産まないし、産みたくても産めないこともあるし、価値観を押し付けないで!という嫌悪感が発生してしまうのだと思います。
一方で、このような議論が巻き起こる発言だった、という意味では非常に価値があり、今後これをきっかけに、「子育てのしやすい文化」というものが醸成されていくための第一歩となったかもしれない、という観点では、(発言の善悪はさておき)非常に意味のあるものだったのかもしれません。
余談
余談ですが、筆者が幼児連れで海外旅行(主にアジアです)をすると、どの国も幼児(や妊婦)に対してとても温かいのを感じます。
日本で幼児連れで電車に乗るときは、少しでも子供が騒ぎ出すと周囲の冷たい視線を感じてとても緊張します。一方、海外では幼児連れで電車にのった瞬間誰かが席を譲ってくれ、愛想も振りまいてくれることが多いです。
日本の場合、
- 子供はうるさくてやっかいなもの
- 例えば電車で少しでも騒ぎ出すと親がしつけがなってないと問い詰められる
という扱いになっているように感じるのに対して、海外の場合、
- 子供はかわいくてみんなで育てていくもの
- 電車で騒ぎ出しても、温かいまなざしでみんなであやしていこう
といった扱いになっているように感じることがあります。はい、若干被害妄想も入っていると思います。
余談 その2
上記中学校のサイトでアクセス数が表示されているのですが、3/11(このニュースが出る前日)は100件ぐらいだったアクセス数が、3/12は8000件に増加しています。皆の関心の高さが伺えますね。